【目の酷使・老眼に】「目」の漢方薬『石決明散』『滋腎明目湯』『益気聡明湯』
スマートフォンやパソコンが欠かせない現代社会。
私たちは知らず知らずのうちに、毎日「目」を酷使しています。
画面をじっと見つめて、目がショボショボしたり、重く感じたりしていませんか?
実は、そんな「目」のトラブルや日頃の健康維持、老眼対策にも、漢方薬が活躍することをご存知でしたか?
今回は、目に深い関わりのある3つの漢方薬をご紹介します♩
1. アワビの貝殻から生まれた『石決明散(せっけつめいさん)』
最初にご紹介するのは、「石決明散(せっけつめいさん)」という漢方薬です。
このお薬のメインとなる生薬(原料)は、なんと「石決明(せっけつめい)」。
これは、あの高級食材としても知られるアワビの貝殻を用いた生薬です。
アワビは海の中で豊富なミネラルをたっぷり取り込み、あの美しく輝く貝殻を形成します。その貝殻を細かい粉末にして薬として用いるのですから、昔の人がこのような使い方を見いだしたことには本当に感心させられます。
古典に記された「目の濁り」へのアプローチ
漢方の古い文献(古典)には、この石決明散について「目の中が白く、あるいは青白く濁るもの」に用いると記されています。現代医学の病名にそのまま当てはめることはできませんが、これは白内障や緑内障などの眼疾患を連想させる非常に興味深い記述です。
私たちは年齢を重ねるにつれて、目の中の水分の循環や代謝が低下しがちになります。その結果、レンズの濁りや眼圧の上昇といったトラブルが起こりやすくなります。
もちろん、進行した病気に対しては眼科での専門的な治療が第一ですが、「初期の段階」や「日頃の目の健康維持」を目的として、この漢方薬は古くから重宝されてきました。
2. 瞳の奥の「血(けつ)」の悩みに『滋腎明目湯(じじんめいもくとう)』
漢方の世界では、目の病気を「外障(がいしょう)」と「内障(ないしょう)」の2つに分けて考えてきた特徴があります。
- 外障: 目の表面(結膜など)の病変。炎症を鎮める生薬がよく使われます。
- 内障: 瞳の奥(水晶体、硝子体、網膜など)に原因がある視力障害。
次にご紹介する「滋腎明目湯(じじんめいもくとう)」は、この「内障」を主な守備範囲とする漢方薬です。眼球内部の広い病変を捉え、アプローチしていく特徴を持っています。
土台は「血」を養う処方。隠し味には“お茶”も?
この漢方は、体に潤いを与えて血(けつ)の巡りを整える「四物湯(しもつとう)」という有名な処方が土台になっています。そこに、古くから目に良いとされる様々な生薬が組み合わされているのですが、面白いのが「細茶(さいちゃ)」、つまり私たちが普段飲むような茶葉も配合されている点です。
臨床の現場で感じる、漢方薬の可能性
私自身、比較的難しい目の病気を抱えた方にこの処方を使わせていただくことがあります。漢方ですので、もちろん「これで完治します」と言い切ることはできません。
しかし、長く経過を追わせていただいている中で、病気の進行が非常にゆっくりとした状態にとどまっている方もおられます。
ある患者様が、無事に会社をご勇退される時期まで視力を保ち続けることができた事例は、私個人としても本当にありがたく、今でも深く印象に残っています。
3. 疲れと連動する「気(き)」のトラブルに『益気聡明湯(えっきそうめいとう)』
漢方の話をするときに、よく「気の病」「血の病」という言葉が出てきます。
先ほどご紹介した「滋腎明目湯」が【血の病+目】を考えた処方だとすれば、最後にご紹介する「益気聡明湯(えっきそうめいとう)」は【気の病+目】を考えた処方と言えます。
そのため、エネルギー(気)を補う代表的な生薬である高麗人参(こうらいにんじん)や黄耆(おうぎ)が中心となって配合されています。
胃腸の弱さや疲れが「目や耳」に影響する?
漢方の古典には、飲食の不摂生や働きすぎ、もともと胃腸が弱いことなどを背景として、目や耳の症状が現れるという考え方が記されています。
つまり、「元気なときにはそれほど気にならないけれど、疲れてくると目が見えにくくなる……」。そんな症状は、まさにこの処方の考え方にぴったり合っています。
目だけでなく「耳」の症状にも
また、この漢方は目だけでなく、耳鳴りや聞こえにくさなど、耳の症状にも用いられてきた歴史があります。
漢方では、目と耳をバラバラのパーツとして考えるのではありません。身体全体の「気」の不足という共通した背景から、まとめて捉えていたわけですね。
実は、私自身も目が悪いため、この益気聡明湯を自分自身で愛用しています。
最後に
皆さんも、知らず知らずのうちに目を酷使し、頭をフル回転させていませんか?
「最近、目が疲れているな」「年齢とともに目がかすむな」「疲れると目や耳の調子が悪くなる……」と感じたら、まずはスマホを置いて目を閉じ、ゆったりとした時間を過ごしてみてください。
目や耳のことに関しても気になる症状がある方は、ぜひお気軽に漢方相談で症状をお聞かせくださいね♩
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